このたび、文部科学省から、学校における新型コロナウイルス感染症に関して、以下の事務連絡を発出しておりますので、お知らせします。
(本件連絡先)
文部科学省外国人学校保健衛生プラットフォーム事務局
Tel:050-3187-8114(多言語での相談窓口)
E-mail:hsfs@mediphone.jp
(別紙)
新型コロナウイルスの感染拡大を防止するための換気の徹底及び
その効果的な実施について
文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課
1.学校における換気の基準について
学校における換気の基準としては、学校保健安全法に基づく学校環境衛生基準及び同マニュアルにおいて、「二酸化炭素は、1,500ppm 以下であることが望ましい。」とされていますが、学校のうち、建築物における衛生的環境の確保に関する法律に基づく特定建築物に該当するものについては、同法に基づく建築物環境衛生管理基準において、二酸化炭素の含有率は概ね 1,000ppm 以下とされています。
その上で、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するためには、過日の事務連絡にてお知らせした別添の「感染拡大防止のための効果的な換気について」(令和4年7月 14 日付け新型コロナウイルス感染症対策分科会提言)において、学校についても、「気候等に応じて、・・・出来る限り 1,000ppm 相当の換気等に取り組むことが望ましい。」とされています。
また、十分な換気ができているかを把握し適切な換気を確保するためには、二酸化炭素濃度測定器を用いて測定することが考えられます。二酸化炭素濃度測定器については、文部科学省「学校等における感染症対策等支援事業」等による補助対象とされています。
2.基本的な考え方及び具体的な対応方策
学校衛生管理マニュアルにおいて、換気は、「気候上可能な限り常時、困難な場合はこまめに(30 分に1回以上、数分間程度、窓を全開する)、2方向の窓を開けて行う」とするとともに、常時換気の方法や、常時換気が困難な場合やエアコンを使用している部屋等における留意点、換気設備の活用と留意点等を示しています。
また、上述の新型コロナウイルス感染症対策分科会の提言においては、飛沫感染及び接触感染に加え、エアロゾル感染への対策として換気の徹底が重要とされるとともに、その具体的な方策として、空気の流れに対して並行に設置するなど、換気を阻害しないパーティションの配置等が指摘されています。
以下において、公益財団法人日本学校保健会が作成した「学校における感染症対策実践事例集(令和4年3月)」に掲載されている事例等をお示しします。
学校における対策を講じるに当たっては、これらを参考にしながら、教育委員会等の学校の設置者において、必要に応じて専門家や首長部局等に協力を求めつつ、学校における換気の徹底に向けて取り組んでいただくとともに、各学校において、学校薬剤師等に相談しながら効果的な換気が行われるようよろしくお願いします。
◇常時換気の方法
廊下側と窓側を対角に開けることにより、効率的に換気することができます。
なお、窓を開ける幅は 10 ㎝から 20 ㎝程度を目安としますが、上の小窓や廊下側のらん間を全開にするなどの工夫も考えられます。また、廊下の窓も開けることも必要です。
参考 窓・扉の開放による効果
12月初旬の小学校の教室における窓・扉の開放による効果を換気回数を指標として検討した結果を示す。
・換気回数:教室の空気が1時間に何回外気と入れ換わったかを示す。今回の教室に教員1人と児童(高学年)35人が在室している場合、学校環境衛生基準のCO2濃度1,500ppm以下を保持するためには、計算上3.18回/h必要である。
・窓・扉が全閉の教室(Case1-1)ではほとんど換気は行われていないが、扉を開放するだけでも約2.0回/hの換気が得られる(Case1-2)。
・対角線上に窓と扉を1か所ずつ10cm開けたCase1-3の方が、扉を全開放したCase1-2よりも換気効果が高く、さらに開口箇所をもう1か所ずつ多くすることで約3.0回/hの換気が得られるようになる(Case1-4)。
参考 エアコン使用下での窓開けによる換気の効果
9月初旬の小学校6年生の教室において、エアコン使用下での窓開けによる換気の効果について検討した結果を示す。
・窓を閉めた状態では、授業開始後約20分で教室中央での二酸化炭素濃度測定値が1,500ppmを超えており、換気が不十分であることが示唆された。
・対角線上に運動場側の窓と廊下側の扉を開放し、連続換気したところ、いずれの条件においても二酸化炭素濃度は1,000ppm以下に保たれた。
・上窓を開放する方が、開放面積が小さいため冷暖房効率が良いと考えられる。また、庇があるため雨が降っても開放でき、冬でも児童に直接冷たい外気が当たらないことから、上窓の開放が望ましいと考えられる。
◇常時換気が困難な場合の方法
常時換気が困難な場合は、こまめに(30分に1回以上)数分間程度、窓を全開にします。
スーパーコンピュータ「富岳」によるエアコン使用時の換気のシミュレーションにおいて、①運動場側の窓を全て左右20cm開け、廊下側の前後の扉を40cm開けた場合、②運動場側の窓を全て左右20cm開け、廊下側の欄間を全開した場合はともに2分程度で室内の空気の入換えが可能であることが示されています。
参考 教室内の二酸化炭素濃度の上昇
教室(容積180㎥)に教師1人及び児童生徒40人が在室している場合、窓を閉め切り換気が行われていない場合、計算上、小学校低学年では約26分、小学校高学年及び中学生では約18分、高校生では約14分で教室内の二酸化炭素濃度は学校環境衛生基準の1,500ppmに達します。
◇二酸化炭素濃度測定器の使用について
二酸化炭素濃度測定器を使用することで、二酸化炭素濃度を可視化し、教室等の換気状態の参考にすることができます。
➢ 二酸化炭素濃度測定器の設置場所
・人の呼気が当たる場所や開いた窓の付近は避けて設置します。
・黒板消しクリーナーのそばに設置する場合は、二酸化炭素濃度測定器を移動させた上で、黒板消しクリーナーを使用します。
参考 二酸化炭素濃度測定器の設置場所について
小学校の教室で二酸化炭素濃度測定器の設置場所(教師用机、黒板、外の窓付近のロッカーの上、ロッカーの真ん中、廊下側掃除用ロッカーの上)について検討した結果を示す。
・廊下側開口部付近である教師用机の上と、外の窓付近のロッカーの上の二酸化炭素濃度は他よりも低い。
・黒板上、ロッカー真ん中、廊下側掃除用ロッカー上での二酸化炭素濃度に大きな違いはない。
★二酸化炭素濃度測定器の設置場所は、開口部付近を避けることが重要です。開口部付近以外の二酸化炭素濃度は大きく変わることはないので人の呼気の当たらない場所や担任が二酸化炭素濃度を確認しやすい場所を選ぶようにします。
◇サーキュレーターの使用について
サーキュレーターを使用することで、空気の流れを作り、教室内の換気を補助することができます。なお、サーキュレーターによる換気効果は限定的であり、窓開けによる換気を基本とし、雨天時やエアコンの使用などで窓が開けられない場合や少ししか開けられない場合に補助的に使用します。
児童生徒等によるサーキュレーターへの接触の防止や転倒防止等、安全に配慮し、また、適切に換気が行われているか二酸化炭素濃度測定器を使用して、換気の程度を確認すると良いでしょう。
参考 サーキュレーターの設置場所とその効果
12月初旬の小学校の教室(窓は全閉、廊下側の扉は全開、エアコン未使用)におけるサーキュレーターの換気の効果を、換気回数を指標として検討した結果を示す。
・換気回数:教室の空気が1時間に何回外気と入れ換わったかを示す。
今回の教室に大人1人と児童(高学年)35人が在室している場合、学校環境衛生基準のCO2濃度1,500ppm以下を保持するためには、計算上、3.18回/h必要である。
〇サーキュレーターを1台使用した場合の効果
・ドアの開口部から少し離れた場所(40cm程度)に設置した方が、開口部から離れた場所に設置するよりも換気効率が良く、約3.0回/hの換気が得られている。
〇サーキュレーターを2台使用した場合の効果
・サーキュレーターを2台とも教室から廊下に向けて設置した場合、1台設置した場合に比べて換気効果に大きな変化は見られなかったが、空気のよどみが改善した(データ未掲載)。
・サーキュレーターを1台は対角線方向に、もう1台は教室から廊下方向に設置した場合、1台だけを対角線方向に設置した場合に比べて換気効果が高くなり、空気のよどみも改善された(データ未掲載)。
・サーキュレータ―を1台は教室から廊下向きに、もう1台は廊下から教室向きに設置した場合、今回の条件の中で空気環境が最も改善された。
★サーキュレーターの設置場所は、電源の場所やスペースも含めて判断することになりますが、サーキュレーターの風が児童生徒等に直接当たらずにより良い学習環境を保つことができる、Case2-1やCase3-1が使用しやすいケースだといえます。なお、首振り機能や風の角度は換気効果に大きな影響は認められませんでした(データ未掲載)。
資料提供:東京理科大学 倉渕隆教授
【出典】学校における感染症対策実践事例集(令和4年3月公益財団法人日本学校保健会)より抜粋
https://www.gakkohoken.jp/books/archives/258
以上